ピルケース

いつものように
別れ際にキスをして
今日もその後の
言葉が見つからない。

きみにとらわれすぎて
きみを失いたくなかった。

カラカラカラ…
力なく振るきみの
ピルケースの中で薬が踊る。

「僕がきみの…」

その続きを言う勇気がなかった

きみもぼんやりとした目で
僕を見ているようで
視点は合わない。

俺に言ってくれたらいいのに。
「あなたに私の…」

きみが望むなら僕も正直でありたい。
そんな受け身で臆病な俺を笑うように

カラカラカラ…
哀しい音ばかりが響く。