季節外れの人事異動

コーヒーのこぼれた染みは
暗号を解く鍵にはならない
ここから見渡せるもの全てに
名前を書いておけばよかった

私の異常な心理とは裏腹に
空にはぽっかりと
雲が浮かんでいる
娘の書いた雲のよう

かと思えば
あっという間に
沸き起こる
冬の入道雲
2匹の鳥は羽ばたかずに
すっと落ちるように
雲を突き抜ける

あああ雨だ
私の指先に
咲いた一輪の花
咲いた途端に
散ってしまった

カイコウズの木の下で
上司の言葉を反芻する
妻にほのめかした
要らぬ勲章

飛び出して砕け散る夢
ほとんどの破片が
水たまりに
音をたてずに浮いて沈む
僅かに舞い上がった破片が
誰かの記憶に
刻まれる 薄い赤

曖昧で醒めた海の碧
さざ波が冬の陽を
静かに反射している