緊急停止、緑ノ岳にて

放り出されるように飛び出し
帰り道を思い出す
荷物はふわふわと浮き
何処かへ行ってしまった

彼女の死相が透明な椅子に映り
歪んだ顔を蛍光灯の光が照らす

現実にいる人やものが
微睡みの中で怪しく戯れる
隣で本を読んでいた
白いワンピースの女が
突然私の目を覆い隠す

私の声だけが
リアルに響きわたり
心臓の音は
大音量で鳴り響く

暗闇の中
スマホの光が
命取りになるので
この苦しみを
呟くこともできずに

朝になるのを
ただ待っていた

耳を塞いでも
聞こえてくるサイレンの音
これは誰へのメッセージ?
誰もが自分に向けられてるなんて
思ってないだろう。
初めて聴く音に
回りを見渡すこともなく
俯き直ぐにTwitter

温かいキャラメルラテ
あなたに「どうぞ」
と勧める夢で目が覚めた

一斉に揺れ出す吊り輪
わずかな微動も逃さず
完璧な集団行動

それまで語られていた
悲惨なストーリーが現実に戻り
規則正しいリズムが刻まれていく